みなさん私は9日の夕方、イタリアからシャモニへ無事に帰ってきました。
今回のグランドジョラス登山では、多くの事を学ぶ事が出来たと思います。
山の魅力と、自然の恐ろしさ。
大きな山の中では、本当に人間は小さな存在だと感じました。
今年のフランスは猛暑で、例年以上に氷河の状態が悪い事は知っていましたが、実際に自分自身が氷河の上を歩いてきて、状態の悪さを体験してきましたので皆さんに報告したいと思います。
先週末までこの辺りは天気が悪くて、山の上では大雪が降っていたので小さなクレバスは新雪で隠れてしまっていたし、氷河上のトレースも雪に埋まって安全なルートが分かりませんでした。
自分は単独登山なので、パートナーとザイルで繋がれているわけではありませんので、クレバスに落ちてしまったらどうしようもありません。
幸い8日の夜は自分の他に、イタリア人の二人組みと、フランス人の3人組(ガイド1人とお客さん2人)が山小屋で一緒に泊まっていたので、夕食の時にフランス人ガイドから色々な情報を聞くことが出来ました。
9日の朝、私は2時に起きて朝食を食べてから小屋を3時に出発したのですが、他のメンバーは私よりも先に小屋を出発していました。
小屋を出てから40分程、雪の積もったなだらかな岩場を歩いていくとプランパンシェール氷河にたどり着きます。 ここからはアイゼンを履いて、ピッケルを片手に持って氷河を登って行くのですが、非常にクレバスの数が多いし、大きく口を開いてしまっている!?
おまけに雪が積もっていて歩き辛い・・・。
クレバスに落ちないように慎重に氷河を登っていき、小屋を出発してから3時間40分後に、プランパンシェール氷河の支流にある、レポゾワールの岩場まで無事にたどり着きました。
ここから岩場を乗り越えて、さらに氷河を渡って登って行くと頂上はもうすぐそこなのですが、この岩場が問題でした・・・。
雪が岩壁残っていて、その雪がガチガチに凍ってしまったいたのです。
私の先を歩いていたメンバーも、この壁に苦戦していました。 先頭はイタリア人の2人組、その後にフランス人の三人組、そして最後に自分の順番で登り始めたのですが、この岩壁の下には大きなクレバスが口を開けているので、ザイルに繋がれていない私は壁から落ちたら終わりです。
慎重に壁を登って行ったのですが、氷と雪に苦戦してなかなか思うように登れません。途中からはグローブを脱いで素手で登っていたのですが、10分もたたないうちに寒さで指が動かなくなってしまいます。
そんな時に私のすぐ上を登っていたフランス人ガイドが、状態が悪いので安全を考えて下りると言っているのです。
頂上まではあと少し。 しかしこの壁を簡単に登る事は出来ません。
もし自分が登りきったとしてもザイルを持って来ていないので、無事にこの壁を下りられるかどうか不安でした・・・。
しかし今ならフランス人パーティーが使っているザイルを、私が下山するのに使わせてもらう事が出来るのです。
私は散々悩みましたが安全を第一に考えて、この場所でフランス人パーティーと一緒に下山をする事に決めました。
とても悔しかったですが、「生きていればればまた挑戦することが出来る。」
今回グランドジョラスへ登りに行く前に、私の大切な人に言われた言葉です。
私を支えてくれている仲間のためにも、笑って帰ってくる事が一番だと思うのです。
自分はいつも単独登山をしていますが、山に登るまでは多くの仲間達に支えられています。そんな仲間達を裏切るわけにはいきません。
本当に今回は仲間の大切さ、自然の怖さ、それに自分の力の無さを勉強しました。
結果的には、グランドジョラスの頂上に立つことは出来ませんでしたが、とてもいい登山が出来たと思います。
来年また自分に力をつけて、もう一度挑戦します!
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